CDとかLPとか、ジャケット買いってのがあったけれど。
このご本も、ジャケット借り(?)かな。笑
厭世マニュアル 著:阿川せんり
いやー、このご時世、もっと話題になっていいような・・・2015年発刊なのねぇ。きっとちょっと早かったわね、カバーをはずすとマスクはずした女の子の顔。文学賞で大賞をとった作品らしく、マスクに選考者の名前とかコメントとか書かれてるのだけれど、それ、ないほうが楽しめる・・・。
独特の文体で、お話も面白くって、もう一気読み。面白かったので、また頭からもいっかい読んでます。
大学卒業時に内定もらったのに、蹴って、引きこもり。実家をでて、マスクをして、親戚のおじさんが店長をしてるレンタルビデオ店でバイトする主人公。
弱いようで、自分を守る強さはピカイチだなぁと感心しながら読みました。
素顔を見せると、誰も彼もが好き勝手なことを喋りました。こちらがなにも言わないうちから、あれこれと断定した気になって、的外れに口を開く。
周りが勝手に憶測して、進んでいくストーリーがなんとも面白く。
周りの「お前なんか」の言葉に怯えて、顔を隠しました。マスクさえしていれば表情は読み取りにくくなる。そうすればもう、誰にも何も言われない。
けれども口裂けは、マスクをしながら、おどおどと周囲の顔をうかがい続けました。
すると隠された口に、他人は勝手に何かを見始めます。
あるいはそれは、自分の投影。
自分の一部をそこに見るから、知った風な口をきく。自分をみるから、平気で貶めてみせる。他人を貶めるよりはずっと楽なのでしょう。それがかつての自分なら、苛立ちながら、痛めつけて楽しむことすらできる。「どうせ自分と同じなんだから」と、わかったように説教もできる。
どうでもいい他人に自分を介入させようとする。
なかなか自分のことを話せない主人公が、相手が何をいわんとするやを理解して、それに応戦しようとするにも、なかなかタイミングがあわず、よかれと思って行動するのに、それもなんだかかみあわず、というもどかしさとか、おかしさとか。
だれかを納得させるなんて無理だし、納得させる必要もないのよね。みんなそれぞれが正しくて、おたがいさま、なんだな。
もし、コロナ禍の今だったら、きっとこの子は、軋轢もなく穏やかにマスク生活を送れたかなぁと、思ったり。