書店主フィクリーのものがたり 著:ガブリエル・セヴィン 訳:小尾美佐
妻を亡くした偏屈な独り暮らしの書店主のところに2歳児が置いていかれる、という設定。田舎街で、ほのぼのとしたお話かと思いきや、淡々とした語り調で、意外にボディブローのきくお話でした。
本好きの面々がキャラクター濃ゆいです。
好きな人を口説くシーン、
「いんや、おれはあんたが本棚に並んでいるのを何年も見てきた。本のあらすじや宣伝文句を読んできた。学校じゃ面倒見のいい先生、ゴッドマザー。地域社会の立派なメンバー。妹の旦那や娘の面倒をみている。不幸な結婚をしたけど、きっと若すぎたんだ、でも最善はつくしてきた」
「うわべだけね」と彼女はいう。
「だけどそれだけでも、おれに先を読みたいという気を起させるね」
なかなか、おしゃれです。
終盤の
ぼくたちはひとりぼっちではないことを知るために読むんだ。
ぼくたちはひとりぼっちだから読むんだ。
ぼくたちは読む。
そしてぼくたちはひとりぼっちではない。
ぼくたちはひとりぼっちではないんだよ。
でもね、マヤ、きみがいまここにいる、ぼくも、ここにいるのがうれしい。本がなくても、言葉がなくても、心さえなくなってもね。いったいこれをどういえばいいだろう?いったいどこからはじめればいいだろう?
本中にちりばめられている会話。それぞれの間で通じるようになっていくウィットが、リズムよくて、じーんときます。
そういうことだったのか、と伏線も回収されていきます。