なんとかなる日々

なんとなく きげんよく のびやかに。

人種的偏見って・・・ 【読了】非色 著:有吉佐和子

一日雨だった昨日。こたつで読了しました。

非色(ひしょく) 著:有吉佐和子 

1970年初版の作品。作者が1931年生まれだから、39歳のとき出版された本。今から50年も前なんですよねぇ。なかなかに読み応えありました。

主人公の笑子は戦時中に工員にかりだされた女学生で、片言でもしゃべれる英語で進駐軍のキャバレーのクロークで仕事を得て、そこで黒人のトムと出会って結婚、出産。戦後の物資の少ない時代にぷくぷくと健康に育てている娘が自慢で新宿へ着飾って出かけるのだけれど、黒人の血を濃くひいた娘に、好奇の眼と酷(むご)く無遠慮な人々に取り巻かれ恐怖を感じて渡米。トムが用意したハアレムの一部屋で暮らしていく。

渡米する船のなかで同室になった留学生や同じ戦争花嫁として渡米する女たち。その中でもカテゴリー分けが行われ、同じアメリカ人でも、プエルトリカンは黒人以下として扱われることや、白人の中でさえ、ユダヤ人、イタリヤ人、アイルランド人は疎外され卑しめられていること‥で、非色、色じゃない、じゃ、なに? と考えさせられる。

金持ちは貧乏人を軽んじ、頭のいいものは悪い人を馬鹿にし、逼塞して暮らす人は昔の系図を展(ひろ)げて世間の成り上がりを罵倒する。要領の悪い男は才子を薄っぺらだと云い、美人は不器量ものを憐み、インテリは学齢のないものを軽蔑する、人間は誰でも自分よりなんらかの形で以下のモノを設定し、それによって自分をより優れていると思いたいのではないか。それでなければ落ち着かない、それでなければ生きて行けないのではないか。

なるほどなぁ。
さいご、主人公は自分の拠る所を自覚して、すっくと立つ感じがあって、読後感は気持ちいいです。たくましくて、めそめそしてない。

人種とか差別とかっていうより生きる食べていく(食べさせる)って大変だよなぁ。そこまで逼迫したことはないから自分って恵まれているのかなぁ‥比べるところが違うだろうか‥年間働かずに1億円の収入のある立場からみれば、今のわたしの暮らしなんてカツカツだと思われるだろうけれど‥ってなんでそんな人と比べてるんだ、わたし?(笑)

 


スローライフランキング